福岡・佐賀民医連

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きかんし ふくおか・さが民医連

2014年3月17日月曜日

385号 患者さんの思いに寄り添う/自治体へ介護キャラバン/シリーズ「これだけは知ってほしい」

○患者さんの思いに寄り添う
10回福岡・佐賀民医連 看護介護活動研究交流集会ひらく

福岡・佐賀民医連第10回看護活動交流集会が2月16日(日)、福岡国際会議場に於いて「一歩前へ、未来につながる、看護・介護からのメッセージ~医療・福祉・地域の懸け橋に」をテーマに開催され、350人が参加しました。記念講演は、山近峰子氏(水俣協立病院元総師長・看護師)が「民医連看護・介護の役割~水俣病を通して思ったこと」と題して講演し、午後は各法人・事業所から応募された104演題が10分科会に分かれ報告されました。
 
参加者に大きな感動を与えた記念講演

社会的な視点で水俣病を考える
山近峰子氏
 午前中の記念講演では山近峰子氏(水俣協立病院元総師長・看護師)が「民医連看護・介護の役割~水俣病を通して思ったこと」と題して講演しました。
山近氏は、水俣市に生まれ、育ち水俣病患者の両親を持つ一人の人間として体験した水俣病の取り組みを、いのちの視点、生活を支える視点、社会的な視点で学んでほしいと問いかけました。また感動的な事例を織り交ぜながらご自身の民医連の看護・介護の実践や水俣病のたたかいの歴史の中で得た教訓を参加者に熱く訴えました。
 
「健康権」の実現へ
「健康権」の実現にむけて活動した山近氏は、「看護・介護の役割は、命を大切にすること(平和と環境)、人権を大切にすること(平等)、社会保障の確立(安心の暮らし)、世の中の実態・事実を知ること、知らせること、そのために情勢学習が必要であること、あなたたちがしないで他に誰がしますか」と呼びかけました。山近氏のリアルな内容とやさしい語り口調で民医連看護・介護の輝きを実感できた講演となり、参加者に大きな感動を与えました。

ポスターセッション
 午後の分科会は、各法人・事業所から応募された104演題が6テーマ8分科会、ポスターセッション2分科会、合計10分科会で報告されました。病院・診療所・訪問看護ステーション・介護事業所・看護学院における看護・介護の取り組みの報告は、事例から学ぶ姿勢が定着し、「その人らしく」を支える民医連の看護・介護の実践事例や、チーム医療、シームレスな連携、褥瘡対策、NST,退院支援など看護・介護の質向上の取り組みなど多岐にわたりました。
 厳しい情勢の中で、民医連の看護の理念「三つの視点と四つの優位」が貫かれた取り組みの報告が増え、「健康権」の実現にむけて着実に発展していることを確信しました。


参加者の感想より
・体験を通して水俣病のことや家族のことについて語られ胸に響きました。 
・体験を含めたお話だったのでわかりやすく健康権に繋がる内容でした。 
・水俣病を取りまく家族の状況について理解が深まりました。 
・民医連看護の寄り添う看護を改めて感じました。 
・「人が生きるということは生活すること、生活するためにできないことを援助すること」この言葉がとても心に残りました。 
・水俣病は教科書でしか学んだことはなく、実際の状況を知ることができ、自分に今何が出来るのか、何をするべきかを考えるきっかけとなりました。
・他法人の取り組み内容も聞けたのでよかった。少しづつ内容が深まっていると感じた。 
・他病院での取り組みを幅広く聞けてとても参考になりました。 
・午前中は講演を聞き、とても勉強になり、午後はみんなの発表を聞くことで、様々な症例、研究から学ぶことは多かった。また参加したい。


○要支援者の介護保険はずし  高齢者の生活を壊さないで

県内8自治体で介護キャラバン 

2015年度の介護保険改正では、要支援者の介護保険外しと特別養護老人ホームからの軽度者締め出しが予定され、利用者や事業者にとって大きな困難が予想される中で福岡・佐賀民医連は、「予防給付見直しによる影響予測調査」結果をもとに福岡県社保協とともに県内8自治体との懇談や陳情、請願活動をおこないました。合計76人が参加し、要支援者の移管先となり不安を抱える市町村に、ともに国に対して改悪ストップの声を上げるように国に強く求めました。
嘉麻市との懇談

介護保険改悪の中身明らかに

1月22日、2015年に予定されている国の介護保険改正―介護保険の要支援者はずし
とその肩代わりを自治体に丸投げー問題で嘉麻市と懇談しました。

高齢化率30%を超す

嘉麻市は、市町村合併以前は福岡県介護保険広域連合に加盟していましたが、合併後は
単独で保険者になっています。人口4万1千人で旧産炭地に属し、65歳以上が13779人。高齢化率は31.9%で全国的にも高い水順にあり認知症を抱える方は65歳以上の高齢者の4分の1に上り何らかの支援が必要な地域です。

国に要望書提出

今回の介護保険改悪で嘉麻市の担当者は「現状でも地域包括支援センターへの職員の配置ができないところもあり困難な運営をしている。要支援者の地域支援事業移行により財政負担は増え、結局、市民や利用者にそのしわ寄せが行くのは目に見えている。」と回答し、
押し付けられる自治体側は完全にお手上げ状態であることを率直に述べました。
嘉麻市では、全国市町村会を通じて既に国に要望書を出しており、今回の会談も真摯に受け止めていました。



○シリーズ「これだけは知ってほしい」

「生活保護問題とは何か 第2回」

池田和彦さん(筑紫女学園大学教授)

  前回指摘したような生活保護制度利用者の増加に対して、要保護状態にある人々を排除する政策が展開されています。しかし、生活保護の問題だと言われていることのほとんどは、最後のセーフティネットとしての生活保護の前提となるべき諸制度の問題なのです。

雇用保障制度の不備

   最も根本的な問題は雇用破壊です。総務省の労働力調査によれば、1990年に2.1%であった完全失業率は、一時期の5%台から「改善」されたとはいえ、2013年平均で4%となっています。もともと日本の完全失業の定義は極めて限定的で、失業状態にある人の一部しか把握されていません。さらに、いくら求職活動を行っても就職に至らず職探しをあきらめてしまった人が定義からはずれるために数字が「改善」しただけだとの指摘もあります。不安定雇用も一層広がり、非正規雇用率は201379月期で36.7%になっています。

社会保険制度の不備

   ところが、失業中の生活を保障すべき雇用保険制度も機能しておらず、完全失業者のうち基本手当を受給している人は2割程度に過ぎません。また、生活保護制度利用者の40%近くは65歳以上ですので、老齢年金が最低生活を保障する水準になれば、生活保護制度利用者は激減します。
  生活保護費についても、約半分は医療扶助費ですから、国民健康保険や後期高齢者医療制度が被保護者を排除する仕組みを改めるだけで医療扶助費は7割以上削減できます。そもそも全ての人の医療費を無償化すれば医療扶助自体が不要になりますから、生活保護費は約半分で済むことになるのです。
  逆に言えば、このような生活保護制度の前提として機能すべき雇用保障や社会保険制度が劣悪な水準であるために、生活保護制度利用者が増加せざるを得ないわけです。
                      (つづく)